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吉本新喜劇におけるサルトゲネシス

芝伸太郎(もみじケ丘病院)

​抄録本文

 「アーメマ」(間寛平)「君たちがいて、僕がいる」(チャーリー浜)「おじゃましまんにゃわ」(井上竜夫)等のナンセンスギャグを真髄とする「吉本新喜劇」と、意味の掛け合いを競う大喜利「笑点」は対極をなす娯楽番組である。後者の熱烈なファンに前者の面白さが理解できるとは到底思えない。
 「吉本新喜劇」のナンセンスギャグは観客が期待する場面で必ず発せられる。桂枝雀が言うような「緊張から緩和へ」といった高尚な笑いの法則は成り立たない。おどろおどろしい反復強迫とも違う。いかなるコンテクストにも無理なく滑り込み爆笑を誘う鉄板ネタのメカニズムは不明だが、我々が日々実践している平凡な支持的精神療法とどこか似ているところがあるように思われる。
 正装正座の落語家たちが意味の地平で行儀よく遊ぶ「笑点」は、人間味あふれるように見えて、実は最もAIが追いつきやすい胡散臭いエンタメなのではないだろうか。他方で、昨今の「吉本新喜劇」ギャグの長尺化も気になるところではある。 

 
 

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