第72回日本病跡学会総会
シンポジウム1
「健康生成的な対話について考える」
4月19日(土)16:00〜18:00
そもそも対話とは何か?
平田オリザ(芸術文化観光専門職大学)
★★プロフィール★★
(兵庫県立)芸術文化観光専門職大学学長
劇作家・演出家・劇団青年団主宰、江原河畔劇場芸術総監督。
1986年国際基督教大学卒業、2000年より桜美林大学文学部総合文化学科助教授、2006年より大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授、2013年より東京藝術大学COI特任教授などを歴任。2021年より現職。
1995 年『東京ノート』で第39 回岸田國士戯曲賞受賞。2006 年モンブラン国際文化賞受賞。2011 年フランス文化通信省より芸術文化勲章シュヴァリエ受勲。2019 年『日本文学盛衰史』で第22 回鶴屋南北戯曲賞受賞。
著書:『わかりあえないことから』、『演劇入門』、『演技と演出』、『下り坂をそろそろと下る』(以上、講談社現代新書)、『幕が上がる』(講談社文庫)、『芸術立国論』(集英社新書)、『ともに生きるための演劇』(NHK出版)、『名著入門 日本近代文学50選』(朝日新書)、『新しい広場をつくる』(岩波書店)など。
現在の学習指導要領に「主体的・対話的で深い学び」という点が繰り返し強調され、にわかに「対話」という言葉が教育現場でもクローズアップされるようになった。しかしその「対話」の定義は明確ではない。
私は三十年来、「対話」と「会話」を区別するところから出発するべきではないかと主張してきた。英語ではdialogとconversationは、はっきりと違うものだが、これを対話と会話という似た語感のものに訳してしまったところから、そもそもの混乱があったのではないか。特に日本語では「対話」という概念が弱く、その点でも日常会話との差異が意識されてこなかった。
私なりの定義は「会話」は親しい人同士のおしゃべり、対話とは異なる価値観のすりあわせを指す。
今回の発表では、その「対話」が私の専門領域である演劇とどう関係があるのかを示し、また日本で対話が生まれてこなかった背景を考えていく。
また対話の今回に、対話者自身の変容という点がある。この点までを考察して、あとの議論の参考としたい。